大正時代に建てられ、築100年を超える大変歴史のあるお住まい。
施主様には以前にも当社で水まわりのリフォームをご用命いただきましたが、今回は門まわりの壁の修復、1階の広い和室と縁側の改築を承りました。

檜皮葺(ひわだぶき)の屋根にアーチ状の窓、竹の腰壁が風情のあるお玄関。
施主様のお話によると、玄関まわりの壁は大正時代に建てられて以来、一度も修繕をせず大切に使われて、今回が初めてのリフォームだということです。
100年前のお玄関は、壁や天井が歳月を経て少しずつ剥落していましたが、美しい木組みや柱は大切に残し、ベテランの左官(1級技能士)の丁寧な仕事で当時の姿そのままに美しくよみがえりました。

ご主人の生まれ育ったこの家が大好きだとおっしゃる奥様は、「わたし達の要望は『すべて元通りに』というだけです。そこを左官屋さんががんばってくれた。大切にしている意匠などはそのまま残して、すごくきれいになりました」と喜んでくださいました。

1階の大広間は、もともと2つの和室の続き間で、欄間(らんま)とふすまで仕切っていましたが、ここに筋交いの入った間仕切りの耐力壁を造って二部屋に分け、耐震性を高めました。

梁の高さまで筋交いを入れるため古い天井を落としたところ、大屋根を支えられるほどの見事な太い梁が何本も出てきたため、計画を変更して現し梁の天井にすることに。
梁の形に沿って耐火性の高いボードを切り、珪藻土を塗って仕上げています。

梁は環境とからだにやさしいドイツ製の塗料でこげ茶に塗装、床には琉球畳を敷いて、和風ながらモダンな雰囲気も感じられる洗練された空間に生まれ変わりました。

施主様は、「天井がだいぶ高くなって、開放感のある部屋になりました。曲がりくねった梁に沿って板を切るのは、大変手間がかかっていましたね。普段から新しく建った建物には入れないほど新建材には敏感なのですが、それがないことも家族みんなで喜んでいます。ここをリビングにしたいほど快適です」と喜んでくださいました。

大容量のクローゼットにも満足いただいています。

ふたつの和室に接する広くて長い縁側も、このたび床材とサッシを新しくしました。
長い廊下は床材を貼り替えました。
新しい床材は下地にも表面にも檜を使った厚貼りの集成材です。普通の集成材に比べて表面の板が厚く、大工さんが施工の際にかんなをかけられるほどです。
集成材は、無垢材に比べて収縮が少ないため、扱いやすいのも魅力。なめらかで美しい檜の床が完成しました。

また、南側は全面ガラス戸でしたが、耐力壁を入れ、基礎も補強してペアガラスのサッシに取り替えました。
重厚な竹の天井は、洗いをかけて独特の渋い色がよみがえりました。

一方、縁側とは反対側にある北の窓は、昔ながらの吹きガラスが美しい格子の窓です。
そこでこの窓を活かすために、LIXIL社のインプラスを採用しました。
従来の窓に加えて、断熱性の高い樹脂サッシを取りつけ二重にすることで、空気の層が生まれ、暖かさを保ちます。

施主である奥様は、「暖かいし、昔のガラスも残してもらってうれしい。以前は、強い風の日などはガタガタ音がしたりすきま風があったりしましたが、そういうこともなくなって本当に快適です。その他にも何も言わなくても金具を打ち直してくださったり、扉がスッと開くようになったり。ありがたいです。またお世話になるのでよろしく、という気持ちです」と明るく話してくださいました。

喜んでいただけて、職人一同たいへんうれしく思います。
こちらこそ、末永いお付き合いをよろしくお願いいたします。